「もう1度空気の実験に戻ります」といって月僧先生たちが手にしたのは、しぼんだ風船が中に入ったペットボトル。
「せーの!」の掛け声で、新村先生と月僧先生は思いっきり風船に息を送り、膨らませはじめました。
月僧先生の持っているペットボトルの中では、風船がパンパンに膨らんでいます。 一方、新村先生の方は… しぼんだままです。
「何でそんなに膨らんでるんですか?! それに口に蓋をしてないのに風船がしぼんでないなんておかしい!」という新村先生に対し、
「肺活量の違いです! もっと真剣に膨らませないと!」と月僧先生。
「じゃあ、みんなにも確かめてもらいましょうよ!」
ということで、実験スタートです。
一生懸命に膨らませようと頑張っている子どもたち。お父さん、お母さんも必死です。 でも、どの風船も全く膨らんでいません。
「ごめんなさい! これには、ちょっとした仕掛けがあるんです。」と月僧先生。とっても不思議なこの現象、一体どんな仕掛けがあるんでしょう?
月僧先生が指し示しているペットボトルの底部分を見ると、そこには小さな穴が空いています。新村先生や、みんなの持っているペットボトルの穴はセロテープで塞がれていたようです。
「穴の空いている状態で風船に空気を送り込むと、ペットボトルの中にある空気がこの小さな穴から押し出されます。そうすると、風船の膨らむスペースが生まれます。」
テープを剥がして、さっきと同じように風船を膨らませると…
見事に膨らみました!
「風船が膨らんだままの状態にするには、もう1度テープで穴を塞いでみてください。」
すると、ペットボトルの口は空いたままなのに、中の風船は膨らんだままです!
「今、ペットボトルの中の空気は、風船の中にある空気と押し合っている状態です。そして口の部分には外から大気の圧力がかかっていて蓋をしている状態なので、空気は外に漏れないんです。」
場内では「本当だ!」「不思議~!」といった声が飛び交っています。
この実験により“空気の押し合う力”を見ることができました。
「次は『空気の押す力』と『大気圧』の関係を見てもらいます。」
と言って、取り出されたのはどこの家庭にもあるラップフィルム。
円柱の容器にラップフィルムを張り、輪ゴムで止めて蓋をしてあります。
「この容器のラップフィルム上と容器の中、両方に空気があります。空気の押す力を感じるために、今から片方、容器の中の空気を抜いていきます。」
道具を使って、徐々に容器の中の空気を抜いていくと…
ラップフィルムはどんどん容器の内へと入り込んでいき、『バンッ!!』という音がとともに破れてしまいました。突然の大きな音に、みんなびっくりしています。
「ラップフィルムが破れた! 空気の押す力ってすごい!」と新村先生。
「容器の中の空気がなくなっていくと、中から押す力がなくなってしまいます。それに伴って、今度は外側から中へ空気(大気)の圧力がどんどんかかってくるので、その力に耐え切れず割れてしまったんです。」とのこと。
外からの空気の圧力と、中にある空気の圧力のバランスが崩れてしまったんですね。この実験で、“空気の押す力”を見ることができました。
「今度はお家でも簡単に大気圧の力を感じられる実験をします。」
用意されたのは大きな水槽の中に水を入れたものと、ガラスビン、プラスチック板。
ガラスビンの口を下に向けた状態で水槽の中へと入れていきます。
中から空気が出て、水でいっぱいになったら口元にプラスチックの板を差し込んでビンを持ち上げます。
すると、不思議なことに“ビンの口”と“プラスチック板”がくっつき、水がこぼれません!
「逆さまにしているのに板がくっついたままなのは、水の表面張力と、板にかかっている大気圧の力が均等だからなんです。今度はこの力がどれくらい強力なものなのか、板に吸盤をつけて重りを吊るしてみます。」
机の上には水の入った500mlのペットボトルが6本と、2リットルのペットボトルが1本用意されました。
「一体何本まで持ち上がると思いますか? じゃあ、手を挙げてください」
それぞれのコールに、「1本」「2本(1キログラム)」には数名、「3本」には10名ほど、「4本(2キログラム)」には約1/3の手が挙がりました。
「では、試してみましょう!」
3本(1.5キログラム)までは余裕でクリア!
6本(3キログラム)も危なげなくクリアしました。
「では、これら全部吊るしてみましょう!さあ、どうなるでしょうか!」
「全部」には約1/3の手が挙がりました。
最後は何と、全てを吊るした合計5kgの持ち上にも成功!
「おおー!!」という歓声と共に、会場からは大きな拍手が起こりました。
実際、この容器の面積から計算すると30~40kgくらいは持ち上げられるんだそうです。2リットルのペットボトル、15~20本吊るしても耐えられるということになりますね!ただ、今回のように「吸盤」を使っての実験では難しいそうです。
この後、「ビンの口に網を張っておくと、板を取っても水が出てこない」という、マジックのような実験も見せてくれました。
「次は、空気の流れを感じてもらう実験をします。」
月僧先生の手には、黄色くて細長い紙が。
「顔の前に置いて息を吹きかけると… 当然、前へ動きますね。では、この紙を唇の下に当てて、矢印にそって息を吹いたら紙はどう動くでしょう? 上へあがるのか、そのままか、自分の方へ向かってくるのか。またみんなで実験してみましょう!」
掛け声とともに、キットから黄色い紙を取り出して実験開始です!
実験の結果、正解は「上へあがる」ということが分かりました。下からの風はないのに、なぜでしょうか?
「紙は風の吹く方に寄ってきます。上から吹くと、空気の流れは紙の上にあるので“上へ”と上がったんですね。次に紙の真ん中を持って、中を通るように息を吹いてみてください。紙の両端は中心へ寄るのか、そのままなのか、離れるのか。どれでしょう?」
再び実験開始です。
結果、こちらも同じく“風の通る”方向へと引き寄せられるので、「中心に寄る」が正解でした。
「今度は青色の紙を取り出してください。両端を1cmずつ折って、屋根が下になるようにして置きます。中心に風を送ると、どうなるでしょう?」
フッと息を吹きかけただけで、紙は一瞬にして飛ばされてしまいました。
「今度は屋根が上になるようにして置いてみます。今度はどうでしょう?」
すると、今度は屋根の部分が下がり“M”のような形になったまま、飛ばされずその場に留まっています。
紙は“風の通る方”へと引き寄せられるため、屋根は下(真ん中)へと引き寄せられ、その部分に上から空気の力が加わることで、飛ばされずに留っていたんですね。