毎年、2月から3月にかけて、その年初めて南よりの強い風が観測されます。これを「春一番」と言います。そして、寒暖を繰り返しながら、やがて、春を迎えます。今回はこのような風を含めて、「流れ」ということについて考えてみましょう。
強い風や、速い水の流れの周りでは、どんなことが起こっているか、実験をしてみましょう。画用紙を4分の1程度に切ったものを二枚用意します。画用紙の両端を折り曲げて、コの字型を作ります。一枚は折り曲げた部分を下に、もう一枚は折り曲げた部分を上にして机に置きます。さて図のように、画用紙と机の間を、ストローを使って息を吹きつけると、どちらが遠くまで吹き飛ぶでしょうか。
①の折り曲げた部分が下になっている方がよく飛ぶような気がしますが、実際には②の折り曲げた部分を上にした方がよく飛びます。また、①の折り曲げた部分が下になっている紙は、息を吹くと、上から押されたように紙がへこむのがわかります。
別の実験をしましょう。図のように紙を一枚ずつ両手に持って、間に息を吹いてみましょう。紙と紙が離れるような気がしますが、実験してみると、紙と紙はくっつこうとすることがわかります。
このような結果になるのは、空気の流れの速いところでは、空気の押す力が、周りよりも弱くなるからなのです。そのため、コの字型の紙の上がへこみ、また、両手に持った紙がくっつこうとするのです。
この原理を使って紙を持ち上げることもできます。10センチ角に切った画用紙を二枚、ストローと画びょうを一個ずつ用意します。図のように一枚の画用紙の中央には画びょうを刺してセロハンテープでとめ、もう一枚の画用紙にはストローの穴と同じ大きさの穴を中央に開けます。ストローの先に切り込みを入れて広げ、画用紙に開けた穴にあわせてセロハンテープで貼り付けます。画びょうの先をストローの穴に入れるようにして、二枚の画用紙を合わせ、手のひらや机の上に置きます。ストローから勢いよく息を吹きこみながら持ち上げると、息を吹いているのに、下の紙もくっついてきます。これも、画用紙の間を空気が速く流れるので、その部分の空気の押す力が弱くなり、周りの空気に押されるからなのです。
では、最後に、ドライヤーを冷風にして、風船を横から近づけると、風船はどうなるか予想してみて下さい。『空気の流れの速いところでは、周りの空気から押される』ということがわかっていれば、風船がドライヤーの風に吸い寄せられるように動くことがわかりますね。同じ理由で、ドライヤーを横に移動させたり、斜めに傾けると、周りの空気に押され、風船は空気の流れの速い方に動くので、ドライヤーの動きについていくように見えます。
水の流れも空気の流れと同じです。流れの速いところでは周囲よりも力が弱くなります。そのため、周囲から押されて流れに吸い込まれやすくなります。海や川で遊ぶときは、くれぐれも水の流れに注意して遊びましょう。
今回は空気や水の流れについて科学的に考えました。身の回りにも「流れ」という現象を発見することができるかもしれません。発見したら、どのようなことが起こっているのかを科学的に考えてみましょう。